自己評価機能と社会的行動(横田澄司 酒井書店 1981) 

目次

序章 自己評価機能と社会的行動の関係
第一章 強化事象による自己関与の口述上の変化
 第一節 自己評価に関する諸要因の検討
 第二節 社会的相互作用における社会的強化の意味(1)
 第三節 社会的相互作用における社会的強化の意味(2)
 第四節 自己関与の口述におよぼす社会的強化
第二章 強化事象による自己概念内部の変化
 第五節 自己概念におよぼすシグニフィカントな他者の影響力について(1)
 第六節 自己概念におよぼすシグニフィカントな他者の影響力について(2)
 第七節 自己概念におよぼすシグニフィカントな他者の影響力について(3)
 第八節 個人の実際上の行動、自己評価および要求水準におよぼすシグニフィカントな他者の影響力

概要

 漠然とではあるが、学習者に自己評価活動を行う際に、その結果がクラスによって偏ることが多いことに気がついた。何でこんなに肯定的な自己評価を行う学習者が多いクラスと、否定的な自己評価に偏るクラスが出てしまうのかという問題は、もちろん評価論研究の具体的な課題である。
 自己評価活動には、自己概念がどのようなものであるのかという点が深く関係している。それゆえに、学習者が国語学習において肯定的な自己概念を形成する手だてを考えて行かなければならない。
 本書はそういった手だてを考えていく上で基礎的な研究の集積であると考えている。
よくできる子が肯定的な自己概念を形成しているとは限らない。その逆も又しかりで、個々人の要求水準の高低がそこに大きく関わっているからである。そうしたことにターゲットを絞った学習記録のチェックが出来る教師がどれほどいるだろうか。学習効果を把握するだけが評価活動ではないし評価の観点でもないということは理解している教師が多いが、では、他にどんな観点があるのかと問われると今ひとつ明瞭な答えが返ってこないのも現実だ。
 学習者が当該の教科の学習に対してどの程度の要求水準を持って学習に望んでいるのかということは学習を構想する上で必要不可欠な学習者に関する情報である。しかしそういった情報を得る手だてはなかなか実際の授業では見られることはない。感覚的にいい授業をする先生はつかみ取っていることはあるが、クラス全員に及んでいるわけではない。
 本書は、社会心理学の入門書であるが、心理学的手法での探求のプロセスがあるため、内容はやや難しいものとなっているが、これまでに述べてきた点に必要性を感じている人は是非一読することをおすすめする。