目次
第一章 「動機づけ研究」へのいざない
第二章 自律性と関係性から見た内発的動機づけ研究
第三章 自己と動機づけ
第四章 達成目標理論と最近の展開
第五章 自己制御学習
第六章 社会文化的アプローチ
第七章 動機づけ研究の臨床的展開
第八章 神経科学的研究と動機づけ研究の将来の展望
概要
最近、中学校で話をする場合、学習の目的について話し合う場面を設けることで、学習効果はアップするという話をする。これは動機づけ研究の成果に照らし合わせると、非常に簡単なことで、「自律的な行動」を経ることで、学習効果がアップするのだから、いったいこれまで何を学習してきたのか、何のために学習してきたのかを知らずに学習すると非常に効果の低い学習を重ねているに過ぎない。
こういう考え方を社会構成主義とか構成主義とかいうのだろうけれども、中学生に学んだことの目的や意義について考えさせることは少し性急過ぎる感じをもっていた。
外発的動機付けと内発的動機付けの問題は、三〇年以上前から取り上げられており、日本でも宮本美沙子さんなどの著書を若いころに読みあさったことがある。しかしあれから、どうなったのだろうかと思いつつも、その後の研究成果を追うこともしないままであった。
認知的評価理論などの研究成果を鹿毛さんなどの著書を読んだりしてちょっとは知っていたけれども、本書のようによくまとめられた書籍に出会い改めてこういう研究の重要性に目が開かれた。
一九八〇年~二〇〇〇年にかけてのデシやライアンの研究を追うだけでも、現在の社会構成主義的なアプローチは深く関係しているとわかる。当然認知科学における知見も最近では十分に消化されて動機づけ研究はさらに飛躍的に進歩しているように思うが、一方で具体的なレベルで学習がどう変わるのかという点についての言及は少ない。
私にとっては、「外発ー内発」の間を変容するプロセスを詳細に理論化してくれているだけでも大いに勉強になったが、それらの知見を受けて現場レベルでの学習論としての研究が進められることを期待してやまない。