学習に何が最も効果的か

 授業における学習活動をどのようにとらええるかということは目的に応じて違ってくるのであるが、いずれにしてもとても複雑で難しい。それゆえに学者、教師もどこかに焦点を当てて断片的に理解するしかない。

 授業の質や良し悪しといった点にまで理解を及ぼそうと思うとさらに難しく、何を基準にどう判断すればよいのかという点も多岐にわたる。教師、教材、学習者の三者の関係性に、学習者間の関係性を加え、関係論的観点から、授業の中で生じている現象としてのコミュニケーションの質をとらえようとする試みも数多くなされた。一方で、学習者の変容を学習効果として測定し、それをもって授業の良しあしを評価しようとする試みもたくさんなされてきた。

 本書は、高次の学習、つまり学習者の内面的な思考や認識のプロセスを可視化することによって、授業の質をとらえようとする、もしくは成功を可視化しようとする試みである。そしてそれは、教師や学習者の授業に対する意識のありようにまで対象を広げている。

 ただし、その手法は仮説に基づく検証の形をとっており、現象の質的分析を積み重ねて不可視の部分を明らかにしようとするものではない。この辺りが研究的に難しいところである。仮説検証型でなければ、授業のように複雑で多様性のある対象から共通項を見出すのは難しい。それゆえに、先にこうではないかという仮説を立てて、それが真であるかどうかを検証することになる。

 これが結局、予定調和的な印象を与えてしまい、取り組んでいるほうも結局結果ありきの分析になっていることにうなだれてしまうのである。もしくは、それすら気が付かずにいる。

 一時期この問題は、教師の経験値を対象とし、そこにすべてを見ようとした時期があったが、それも現在は掘り尽くされた感が強い。新しい授業の形を模索する流れは政策的な意図と見分けがつかなくなってきている。