ファシリテーター・トレーニング (南山大学人文学部心理人間学科監修 ナカニシヤ出版 2003)

目次

第一章 学びを支えるファシリテーション

第二章 学ぶこと・教えることの仕組みを探る

第三章 学校教育ファシリテーションへのアプローチ

第四章 体験学習ファシリテーションへのアプローチ

第五章 教育ファシリテーションの応用と実際

 

概要

 経験を通して学ぶことが学習効果の高いことはいうまでもない。国語科教育においても、言語活動を中心に据えた学習が組織されることが多くなった。これは「知っている」レベルから、「使える」レベルへ、そして状況や内容に応じて「よりよく使える」レベルににいたるまで、学習者の学習を学校教育において確保しようとする試みであるとも言える。  

 そこで多くの教師が言語活動を中心にした学習を構想しているのであるが、いくつかの点でうまくいかないことが多い。その中の一つが、「学習者自らが活動に取り組む」ということを導くのが難しいのである。  

 これまでの教師の「教える」ことにまつわる様々な技術では、かろうじて「動機付け」を頑張ってみるくらいしか見当がつかないだろうが、社会教育を中心としたワークショップやセミナーなどでは、「ファシリテーター」の存在が大きな役割を果たしている。  

 前々からいくつかの学校で講演をした際に、この「ファシリテーション」ということを自覚的に行う必要性を論じてきていたのであるが、具体的には、なかなか私自身もできないでいるというのが現実だ。そういう意味では、本書などいくつかの書籍をここで紹介し、私もともに学んでいかなければならないなあと強く感じている。  

 本書は、これまで社会教育のフィールドで語られてきた「ファシリテーション」を、学校教育の場に持ち込んでみたらどうだろうかということを具体的に提案している。  

 個人的な考えではあるが、おそらく「動機付け」ということと「ファシリテーション」の違いは、活動に対する見通しや価値を実感することで活動に導くことを狙っている点であり、単に断片的なおもしろさを過度に強調しているのではない、というところだろう。