目次
序章 競争と試験の状況から
第一章 試験の風景
第二章 試験制度の成立
第三章 試験制度の実際
第四章 試験による淘汰と教育のひずみ
第五章 仕掛けとしての試験
第六章 中学校における競争と淘汰
第七章 進学競争の世界
終章 「試験の時代」と競争
概要
受験競争が激化していた時代に育った私にとって、試験に向かって計画的であること、戦略的であることなど様々な受験技術を身につける機会であったが、それが今の生活に何ら寄与していないことは言うまでもない。大学に入って、そういった呪縛を自らが解き放ち、ようやく学びたいことを自分で学ぶことが出来るようになった。
こうした恐怖からの解放がなければ、やっぱり学ぶこと自体を避けて生きていたように思う。
自分の生活のために様々な学習を計画し実施し必要な力を身につけたり、知識を得たりすることは、楽しいとかおもしろいとか言う以前に必要なことではあるが、それに対して根本的に、いや感情的に嫌悪感を抱いてしまうような学生も多い。
これは試験による悪弊だと断じることは簡単なことだが、どうしてそうなってしまったのかとか、どうすればそういった呪縛から解き放たれるのかといったことを考えるとそう簡単なことではない。
本書は、明治以来日本の教育がどのように試験制度を位置づけ、どのように利用してきたのかということに関する歴史がまとめられている。
「試験制度」という厄介な難物を、現在向き合っている状態ではなく、長い歴史の中で捉えなおしてみると、以外に役立つ制度であったこともわかる。
明治後期から大正時代にかけての予備校や学習塾などの隆盛を見ると、同じ事を繰り返しながら日本の教育史がつむぎ出されてきたことを実感する。
最近の学生たちの基礎学力や読書量が低下しているのは、受験競争が緩和されたからだ、などという人も多いようだが歴史的に見てその答えをどう出すか。